REVIEW

2004/07/25

【映画】 スパイダーマン2

言わずとしれた人気アメコミの映画化第二弾。アメコミ史上最も弱いヒーローだ。今回もストーリーの中心はスパイダーマンであり続けようとする主人公の葛藤。そりゃサイドビジネス(しかもお金にならない)でスパイダーマンをやってたら、仕事は続かないし大学の授業だっておろそかになろうというものだ。愛する彼女に気持ちを打ち明けたら敵に狙われるからと愛してないフリをしたり。原作は全く知らないのだけど、「敵」についても、例えば地球制服を狙う“どっから見ても悪”というものでもなくて、科学の発展にためにと思ったのに夢が暴走し自分を見失う科学者だったりする。だからとっても人間くさい。善と悪の明確な対立がない分、内面の葛藤に向かわざるを得なくて、そこがまた魅力なのかなとも思ってみたり。シリーズ3作目は親友との対決らしい。その伏線もバッチリ。
突っ込みどころは満載だが、こういうのは遊園地のジェットコースター気分で見るもの。スパイダーマンの目線になって摩天楼の間を飛翔していく気分が爽快。

2004/07/21

【映画】 スイミングプール

監督 フランソワ・オゾン
主演 シャーロット・ランプリング

「8人の女」を撮ったオゾン監督がその中の2人の人物をクローズアップした物語を作った。若い女と初老の女性作家の短い夏を描いたミステリー。奔放な若い女と厳格でニコリともしないいかにもな英国女性(ランプリング)との間。奔放な娘ジュリアより初老の作家であるランプリングの方に感情移入してしまう。失われた若さへの憧れと男に奔放な行動への軽蔑、それは裏腹なものだ。プールのある別荘以外にはほとんど場面は広がらないのに全然飽きない。ついに起こる殺人、これも計画されたものにも衝動的なものにも見える。そしてラストの意外な結末。謎は謎のまま残される。女同士の確執でありながら、明確な「恋」が現れてこないので地味ではあるが、その分本質的なことを感じられた気がする。若い女と初老の女では、同じ女でもすでに人種が違うというような……。
シャーロット・ランプリングを監督が起用したワケは、一切美容整形をしていないからとか。確かに勇気があると思うくらい肌も指も髪も素のままだった。でも、ランプリングといえば「愛の嵐」のあの裸体が有名だが、全裸のシーンでほとんど身体の線が崩れてなかったのには驚いた。
女は整形やエステなどあらゆる手を使って時を止めようとする者が多いが、こうして自然に年をとっていく人も美しいと思った。とはいえ、自分はジタバタするクチだけど。
どうしても気になったのは、劇中劇ではないが、主人公が映画の中で書き続けていた小説の中身。それが殺人事件とかかわっているらしく、中身を知りたくて知りたくてたまらなかった。まあ実際にそれが出てくれば多分蛇足に感じてしまうのだとは思ったけど。ノベライズでもあればぜひそこまで描いてほしいものだ。
上質なミステリーをお好みの方にはおススメ。

2004/05/05

【DVD】 「八月のクリスマス」

監督:ホ・ジノ 主演:ハン・ソッキュ ジム・ラナ

主演のハン・ソッキュはこの映画の中ではカメラ屋のさえないオジサンで、見た目も全然ハンサムじゃないし、フツーの人なのだが、韓国ではベテラン人気俳優なのだとか。
派手さはまるでないし、ラブシーンらしいラブシーンもない、ただただ「淡々とした」ラブストーリーである。だけど、なんかほのぼのとする。そしてなぜか泣ける。
普通ならここを絶対描くだろう、というシーンはあえて描かない。日常のほんの些細な場面、なんか気になるヤツがいつもいる場所にいない、そのいらだち、好きな女の子を病院の窓越しに見る、愛おしそうに彼女に向けて手を伸ばす……そんなところに人の優しさや恋心がさりげなく描かれている。好き嫌いは分かれる作品だとは思うけど、話題になっただけのことはあると思う。

最近立て続けに3本の映画・ドラマの中ではからずも同じセリフを耳にした。この映画の中でも。それは「なんでオレ(私)なんだ」。いずれも難病に侵された主人公の叫び。なんで私なの、なんでそこら辺歩いてるチャラいヤツじゃなくて私なの……人は不幸に襲われるとそんなふうに自問自答(答えは返ってこないが)するものだ。

2004/04/29

【DVD】 「秋の童話」

「冬のソナタ」の監督の純愛連作第一作目の作品。産院で取り違えられた女の子は中学生の時に入れ代わることになる。金持ちのお嬢様とガラの悪い貧乏な家の娘。「兄」だと思っていた人との恋にヒロインの白血病……不幸のてんこ盛りだ。だけど、けなげに生きていくヒロイン・ジュンソ。「冬ソナ」のヒロインもそうなのだけど、韓国純愛ドラマのヒロインは基本的に自分から動かない。決断するのは「身を引く」「あなたと生きる」という動作くらいだ。(それもまあ大きいといえば大きいが)ただひたすらに涙を流し、耐える。この作品でもいくつものトライアングルがある。一番大きいのは兄とその親友とヒロインの三角関係。ヒロインが病に侵され手だてがない時、愛されてないと知りながら彼はヒロインを助けようとする。「病気が治ったら『ごめんなさい。あなたのこと愛してなかったわ』って去っていけばいい、でもそれまでキミを助けたい」と涙を流す。韓国ドラマではヒロインもヒーローもみんな純粋に涙を流すのだ。たぶん日本人がハマるのはそんな純なところじゃないだろうか。
このドラマのラストは悲劇。ヒロインは死んでしまい、恋人は後を追う。しかし、ラスト2回は明らかにエピソードがショートしたらしく回想シーンてんこ盛りだったのには苦労が忍ばれて苦笑してしまった。

【本】 「ヴァンサンカンまでに」 乃南アサ

ちょっと意地悪な女心を書かせたら第一級!だと私はこの人のことを思っている。この本はある業界が舞台になっていて、そっちのことを知りたくて購入。新入社員として入社したOLが幸せを求め、結婚はハンサムで有能な先輩をゲット、ゲームとしての恋はできる上司を……と手玉にとっていいオンナを気取っていたものの、現実はちっとも幸せでなく……というお話。自分より不細工だけど資産家の令嬢である先輩が医者と結婚していったり、ハンサムな恋人はとんだ勘違い野郎だったり。若さだけが取り柄のヒロインの焦燥感がジリジリと表現されていく。それはそれで小気味よいのだけど、どうにもこうにも耐えられなかったのが、その焦りや怒りの気持ちをペットの亀にぶつけていくところ。いじめ殺してしまうのはどうなんだ。生理的にその一点で私はこのヒロインに感情移入できなくなってしまった。それが作者の狙いだとしたらハマっていたことになるのだけど。
女ってのはいくつになっても「なんとかしなきゃ」という焦りを持って生きていく生き物なのかも、と思わせる作品。

2004/02/28

【映画】 「ラブストーリー」

監督:クァク・ジェヨン 主演:ソン・イェジン チョ・スンウ

直球ど真ん中の純愛映画である。「猟奇的な彼女」の監督の最新作で韓国では200万人を動員したそうだ。現代から始まり、母の手紙と日記を読む娘の片思いの恋を間に挟みながら、母の悲恋を追体験していく。娘と母は一人二役。素朴で美しい35年前の田舎の風景や引き裂かれる恋に泣く少女の表情がせつない。きっとこの小道具が娘に何らかの形で引き継がれていくんだろうなあというのはかなり早い段階でわかってしまうし、35年前の若者たちの誰と誰が結婚したかも最初から見せてしまうのだけど、泣ける。途中いきなりベトナム戦争の戦場のシーンが入り込み、これがまた恋を引き裂く大きな枷となる。国の歴史を知らないせいもあるが、急に戦争に行くことになるのでちょっと戸惑う。しかし、「お願い!生きて帰って……」このセリフは戦争に行く恋人にしか使えない、そして究極の枷だ。
愛し合う二人に集約して見ていくとかなり泣けるのだが、あまのじゃくな私としてはどうしても気になってしまうのが、妥協で結婚された相手のこと。もっとも映画の中ではまったく出てこないので気にならないようにできている。これも技なんだろう。
「初恋のきた道」系の素朴な純愛系映画である。

【舞台】 「狂風記」

原作:石川淳 出演:市原悦子 李丹 若林淳 加納幸和 他

あるドラマの打ち上げで「花組芝居」の役者さんと隣同士になって以来、花組の役者さんが出演する舞台のご招待が続いている。興味のあるものを選んでは時々見せてもらっている。今回は花組の座長の加納さんと水下きよしさんが出演ということでご案内をいただき、市原悦子さん観たさに出かけたアートスフィア。まず舞台が変わっていた。円形でサーカスみたいに左右の袖にも客席がある。そして場内上に大きな大きな布。そこには各民放テレビ局の名前と市原さん主演の2時間サスペンスのタイトルが!「家政婦は見た」とか。これがまず面白かった。
肝心の芝居は、演劇化が不可能と言われた石川淳の原作がべースになっているそうなのだが、生憎原作を読んでない上、かなり観念的な話でストーリーについていくのが大変。実際「家政婦は見た」の市原ファンのおばちゃんたちは完全にお手上げだったようだ。「ねえねえ、これ一体どういう話なの?」休憩時間にあちこちで聞こえた声である。
「富と権力を誇り社会を凌駕しようとするものたちと人間らしく生きようとする貧乏な人々の闘い」とパンフにはあるが、貧乏な人たちがこの世の者ではない感じなので(魔女とか)わかりづらい。ただ、市原悦子さんは大変美しかった。家政婦とは全然違った。魔物のヒメらしくミステリアスだった。そして、全身白塗りの「大駱駝艦」の舞踏、鍛え抜かれた体は全然いやらしくなく違う生物みたいで目を引かれた。
すごーく面白かった、とは言い難いが不思議な時間を過ごせた。

2004/01/06

【本】Deep Love 第一部アユの物語  Yoshi著

シリーズ3作で50万部突破、若者に絶大なる指示、映画化、文学とは呼べない、携帯サイトからの発信、横書き……などというさまざまな評判が気になって読んでしまった。1時間で読了できる。小説とは少なくともこうあるべき、と思っている人間にはつらいと思う。ただ、今本を読まなくなっている若者たちはこのくらいかみ砕かないと心に入ってこないのかということはわかった。たぶんこの本を読んで泣けたり人生観が変わったりする子たちはハリー・ポッターは読まないだろう。(疲れるから)「読んでもらわないことには話にならない」という著者のインタビューを読んだことがあるが、とにかく本を読まない人間が、この純粋というよりはあまりに物を知らない女の子の生きざまやらおばあちゃんの語る戦争体験を読んで少しでも想像力を働かせることができたら、この本はそれで成功なんだと思う。
それから、図らずも感じたのは、「グロテスク」と共通するある感覚だ。それは援助交際する女子高生と夜の街に立つ元美少女、この二人に共通する“体を売る”という行為の果てにあるものだ。自分で自分をコントロールしているつもりがやがて美しさとともに人としての尊厳が失われていく、その堕ちていく哀しさである。

2004/01/02

【本】 黒蠅(上下) P・コーンウェル著

シリーズ3年ぶりの新作。久しぶり過ぎて前作の内容を忘れてしまった!しかし、冒頭からの奇妙な違和感。なぜかと思ったら、今まで主人公ケイの一人称で語られていたものが三人称になったのだ。そのためヒロインの内面を掘り下げていくことが少なくなったかわりに、登場人物各々が客観的に描かれ、なんだかスピーディーな映画を観てるようだ。舞台もアメリカ各地からポーランドまでと幅広い。そしてもう1つ、大きな違和感の理由は、ケイの年齢が若返ってしまったのだ!前作からの流れでいうなら60を越えているはずが46歳に逆戻り。まあシリーズを続けていくためなのだろうが。それにしても前々作の犯人が大きな役割を果たし、前々作で死んだ恋人が実は生きてた、など、一体どの時点から考えていたことなのだろうと著者に聞いてみたい気はする。
確かに面白いのだけど、シリーズの最初の頃に感じたような、あのミステリと心理劇の融合するようなワクワクドキドキ感は残念ながらなくなってしまった。

【本】嗤う伊右衛門 京極夏彦 著

「こんな伊右衛門みたことない」
たしか新書で出版された時、こんなコピーがついていたと思う。文庫になってようやく読んだ。「四谷怪談」は演じられる舞台・映画ごとにさまざまな解釈があるけれど、確かにこんな伊右衛門・お岩は初めてだ。だけど、今まで見た中でもっともしっくりきた。多分それはお岩というこの時代の女とは思えないほど自分を持ち、そしてその自我ゆえに苦しむヒロイン像が現代女性に近いせいかもしれない。そして伊右衛門。歌舞伎でいうところの色悪として描かれるとおり一遍の色男じゃない。お岩への潔いまでの愛。周囲の悪人たちがドロドロしているだけによけいに二人の愛は清いのだ。この話にお化けは登場しない。もちろん仏壇返しやら戸板返しに当たる場面もあるにはあるが、それはケレンではないのだ。二人のキャラクター造形とともに際立って面白かったのは、因果応報というのか、人の心の闇が招いた悲劇の連鎖。お岩の顔が崩れる薬を飲ませたのは実の父だったのだ。娘を手放したくないという思いから……それを知った悪の中の悪人が薬問屋の娘を手込めにし……その悪人にもまた恐ろしい過去があり……と後々全部がつながっていくのだ。後に「巷説百物語」の主要人物が重要な役どころで登場するのがまたいい。間もなく唐沢・小雪という組み合わせで映画が封切られるが、どんな伊右衛門・お岩を見せてくれるのだろう。でも、私の頭の中のキャスティングではちょっと違う。若い時の田宮二郎と浅野温子なんである!ちょっと濃いか?

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