SNS全盛時代、ネットに動画や音楽をアップすることの意味や意識が
今まさに曖昧になっている気がします。
ダンスパーティー(いわゆる発表会)での動画撮影禁止はおかしい、
どんどん撮ってSNSで拡散して、宣伝すればいいのに、という意見が
散見されます。
しかし、そんなに簡単なものじゃないでしょう。
少し前、ある音楽家の方が一般の方から結婚式ソングの依頼を受けて
喜んで引き受けると言った後で、「通常これくらいの費用をいただいています」
とお金の話になったところ、
「え?タダじゃないの?宣伝になるのに」
と言われ、決裂したという話がツイッターに上がっていました。
「宣伝になるから」って、全然理由になっていないということがわからないのでしょうか。
プロの仕事には、必ず対価が発生します。
ダンスパーティーで踊られるプロフェッショナル・デモンストレーションは
プロの「仕事」です。
彼らはレッスンで技術を売り、ショーでダンスを見せることで対価を得る仕事です。
ショーの費用は、パーティー代金の中に含まれていて、その場に参加したお客だけが見る権利がある。
撮影を禁止するのは、もちろん後でDVDを販売するためでもあるけど、
ダンサーは「ダンスを見せて対価を得る」人たちだからです。
それを勝手に拡散してしまえば、確かにそれを見た何百人かに1人は教室に
足を運び、お客になってくれるかもしれない。
だったら、その場に高いダンスチケットを買って足を運んだお客はなんなのだ?
ということになりませんかね。
アーティストのコンサートに行って、許可もなく撮影してSNSに上げれば、
訴えられますよね。それと同じことじゃありませんかね。
でも、世界チャンピオンの踊りはYou Tubeで見られるじゃないか?と
思う人もいるかもしれません。
でも、彼らは徹底的に肖像権の管理をしています。
You Tubeにアップするにも必ず費用は発生しているはずだし、
競技会に出場する時には、それが業者(=You Tubeに上げることで利益を得る)
を経てネットに上げられることは当然承諾した上で出ているはずです。
たとえアマチュアデモンストレーションでも、自分だけじゃない。
そこには振り付けを考え、一緒に踊っているプロが映ってしまうわけで
本人の許可なしに勝手にSNSに上げることは許されないでしょう。
教室での練習風景の動画撮影も同様でしょう。
完全に禁止しているところもあれば、私が通っているところみたいに
積極的に動画撮影を推奨して自主練習に役立ててほしいというところもある。
でも、それを全世界に通じてしまうSNSにアップすることはまた別です。
プロの先生と一緒に写真撮影した時、それをブログに上げたり、
人のブログをリブログする場合でも、私は必ず本人の許可をとるようにしています。
肖像権というものがあるからです。
それを「宣伝になるからいいじゃん」で済ましてはいけないと思うのです。
そこら辺があまりにもルーズで、勝手に転載された人が激怒しているケースは
たくさん耳にしました。
そういうことはなにも何かのプロフェッショナルだけではなく、
一般の人のスナップショットだって同じはずです。
ダンス界は頭がカタイ、もっと広めていく努力をしなければじり貧だ
という意見には賛成です。
そのためにYou Tubeを活用し始めた若いダンサーたちもいるし、
旧態依然としたホテルパーティーだって、もっともっと改変の余地があることは
確かです。ショーの部分だけ安価な別料金でお客を入れるとかね。
だけど、そういうことと安易な撮影とSNSへの投稿をいっしょくたにしては
いけないと思います。
議論に参加するつもりはないし、そもそも当事者であるプロが反論するならするべき
ことだと思うので、こっちでひっそり覚書として書いてみました。