十月大歌舞伎
十月大歌舞伎へ出かける。
もらったチケットなのだけど、席は3階の一番後ろ。花道は全然見えないけど、オペラグラスを使えば問題なかった。というのも、今日の演目は動きが少なくてじっくりとセリフで人間ドラマを見せていくものだったからだ。
夜の部の2つだけ見て、3番目の浄瑠璃はパス。
最初の「井伊大老」は初演が40年前なので、歌舞伎の世界では「新作」と呼ばれる。桜田門外の変で暗殺される前夜とその少し前に絞って井伊直弼の苦悩と側室お静の方との愛情が描かれている。
井伊直弼は井伊家のなんと十四男だったのだそうだ。300石の部屋住の侍が運命で大老にまで上り詰めてしまう。開国を推進し、攘夷派を弾圧したために多くの敵をつくる。自分の命が長くはないことを察している。部屋住の時から側女として仕えたお静とともに「昔に帰りたい」と語り合うシーンは涙を誘う。
井伊直弼は今回初役という松本幸四郎。父の当たり役に挑戦なのだそうだ。人間くさくてとてもよかった。お静は人間国宝・雀右衛門サマ。たしかこの方は80歳前後だったはずだが、まあそのかわいらしいこと。本妻への嫉妬、自分の決断に揺れる直弼を支える様子。実際の二人がどんなだったかは知るよしもないけど、きっとこうやって二人して「彦根に帰りたい。あの頃は貧しかったが幸せだったな」と言ってたのかも、と思わせる。
「実盛物語」は大好きな仁左衛門サマ出演。「源平布引滝」の全5幕より3幕目だけの上演。それでもイヤホン解説があるので、前後がなくても結構わかるもの。
相変わらずお美しい仁左衛門サマだが、舞台でコンコン咳こんでいたのが気になった。体調悪いのかな。
退場は馬に乗って。この馬役がまた本物さながら。もちろん“馬脚をあらわす”なんてこともなく。
ついついスター役者と馬の足役……なんて役者悲喜こもごもに思いをはせてしまった。
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