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2002年6月

2002/06/22

【本】「煙突掃除の少年」 バーバラ・ヴァイン

ルース・レンデルのもう1つのペンネームで書かれたもの。こっちの名前を使う時はシリーズものでないキャラクターを掘り下げた心理サスペンスを書くのだそうだ。で、今回のこの新作は今までのヴァイン名義で書かれた中でも最も秀逸。一人の有名作家が心臓麻痺で亡くなり、残された娘が回想録を書くにあたって父の過去を掘り起こしていくと、思わぬ秘密が……というのは別に珍しい構図ではないのだが、視点がその娘(ヒロインというわけではない。結構ヤなやつ)だけでなく、最初から最後まで夫婦としては最悪の40年を過ごした妻の視点からも描かれ、過去とそれぞれの現在が自由自在に行き交うのだ。それでいてややこしくなることは全くなく、そりゃあもう見事な構成。70過ぎてこんな本書いちゃうレンデルおばさんは私にとって永遠の憧れの作家。
なんといっても、ラストでの「秘密」の暴露の仕方が見事。
決してハデな殺人事件が起こるわけでもなく、謎とはいっても、それは人の心の闇に基づくもの。読み終わるのが惜しくなる小説。(とはいえ、かなり好みは偏っているので誰にでもおススメとは言わないけど)

2002/06/18

【舞台】 白石加代子 「源氏物語」第一夜

2002年6月17日 りりおホール
瀬戸内寂聴 現代語訳による「源氏物語」より 六条御息所
台本構成/演出 鴨下信一

ずっと聞き続けている「百物語」と並行して始まった「源氏物語」。いつもながら変幻自在な語りによって脳裏に平安の都が浮かび上がる。光源氏をめぐる女たちの物語を聞いているうち、そこにある女心、恋心は千年の時を経ても少し変わらないものだと思う。稀代のプレイボーイ光源氏はその光り輝くような美しさと知性で高貴な女性を次々ととりこにしたらしいが……なんとも罪作りな男という印象は六条御息所の狂おしいまでの思慕の念と生霊、そして死霊になるほどの嫉妬の心が胸に迫るから。
それにしても扇の使い方1つ、しぐさ1つで次々と登場人物になりきる白石さんの演技はいつもながらすごい。最後に真っ赤な舌を出して死霊を演じた瞬間は震えがくるほど怖かった!
そして、千年の時を経て語り継がれる物語のすごさと同時に、日本語の美しさもまた堪能。第二夜が楽しみ。

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