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2002年5月

2002/05/21

【本】 「月のしずく」 浅田次郎

浅田次郎作品はわかりやすい、せつない、泣ける。これは短編集なのだがどれもこれも胸が痛くなるような人間同士の心の機微が描かれていて、わかっちゃいても泣かされてしまうんだなあ。会ったばかりのタカピー女と労務者、ヤクザと女と少年、母と娘、昔別れた父と息子、そしてその愛人……関係性はそれぞれ違うし設定も全部違うのだが、どれも誰でもが共感できる一番原始的な感情のトラウマだったりするのだ。
ラストに収録されていたせいか、私は『ピエタ』というイタリアを舞台に展開するラストの作品が印象的だった。娘を捨てて駆け落ちした母と「いい子にしてればお母さんは帰ってくる」と信じていい子を演じ続けて三十路を過ぎた娘。「もういい子でいなくていい?」という娘の吐き出すような心の叫びが胸を衝く。
浅田作品はギャグに満ちたのも好きだし、「鉄道員」系のハートウォーミング(陳腐な言い方だが)の作品も好きだな。いずれにしても映像がすぐに浮かんでくる。だからドラマや映画化されるのが多いのだろう。

2002/05/14

【本】 「眠れぬ夜を抱いて」 野沢尚著

大好きな脚本家の一人、野沢さんの小説。現在テレビドラマが放送中でもある。誰が主人公なのかといえば、ドラマで財前直見が演じる一人の主婦である。自分の夫の分譲した住宅で次々と起こる連続失踪事件。被害者だと思っていた夫こそが実はその黒幕だった。その陰には十年も前の恋人の復讐があったのだ。
ここで一つの疑問が。恋人の復讐というのはとてもよくわかる動機なのだが、恋人によく似た女を妻にし、子供にも恵まれ、「よく似た女」ではなく、全く別人として愛し始めていたのに、なんとなく別れてしまった恋人のためにここまで大がかりな仕掛けを組むほどの復讐心というのは持ち続けられるものなのだろうか。それほどの憎しみや悲しみを持ったことのない凡人としては正直わからない。それが中盤以降からずっと気になって仕方なかった。
とはいえ、ミステリーの仕掛けとしてはなかなか面白い。過去の事件がしっかり作ってあるので厚みがある。しかし、それがわりとすぐにわかってしまい「え!?そうなの!?」という部分がないのが残念。
しか~し。自分で原作を書いて脚本化なんて夢のよう。

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