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2002年3月

2002/03/17

【本】 「邪魔」 奥田英朗

昨年の「このミス」第二位の作品である。ミステリーでありながら、なんと最後まで誰も死なない!同じく1位だった「模倣犯」の死体ゴロゴロから比べると、実に地味は地味だ。しかし、人間描写がすばらしい。タイプでいうと、私の大好きなルース・レンデルに通じる。犯罪が起きるまでじわじわと追い詰められていく心情。そこには誰の心にも起きるかもしれない普通の日常にひそむ「悪魔」が隠されている。幸せだと信じきっていた家庭に、愛する妻を亡くした刑事に、未来に希望を持てない高校生に……“それ”は音もなく忍び寄り、からまり合い、やがて破滅へと導いていくのだ。
何かを守ろうとした女の強さ、おろかさ、激しさ、ラスト近くの平凡な主婦の変身ぶりが恐ろしくも哀しい。そして自分の中にも同じような夜叉が隠れていないとは言い切れない、そんなコワサを残して終わる。

2002/03/15

【舞台】 「ありがとうサボテン先生」

原作 宮部みゆき 脚本 成井豊 演出 水田伸生
出演:いかりや長介 佐藤アツヒロ 篠原ともえ 北村総一朗ほか

幻想的なアクロバットシーンから始まる。原作とのあまりの隔たりに何事か!?と思ったのだが、それが原作を大きく膨らませたある要素のシンボル的なメタファーになっていた。要所要所にミュージカルのように歌が入るのだが、意外と違和感はない。とにかくドラマのディレクターが演出しているだけあって、舞台転換が早い、早い。大仕掛けの装置がとにかく目まぐるし変換し、飽きるヒマがない。
お話としては、卒業間近の小学生と定年間近の教頭先生の交流を軸に、幻想的な存在である篠原ともえや生徒の中の1つの家族をクローズアップしてあったりして、それが上手に絡まり合っていて、とても勉強になった。
ラスト近くは客席を思い切り使っての芝居になる。間近に北村さんが座っていてびっくり。そんな仕掛けが面白い。あとコメディーリリーフの用務員さんの役はパンフに載っていなかったので、後から付け足したのだろうか? チョコチョコ出てきて笑いを誘う。結構大切な要素になっていた。
とにかく楽しい舞台だった。ちゃんと泣いて笑えて、すっきりする作品。

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